無限/夢幻の箱庭

言葉はすべて。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が教えてくれた、理不尽の超克

 
名前どころか感情のなかった少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが「自動手記人形サービス」となる。この想いを胸に。
−「愛してる」が知りたいのです。−
 
生きていれば誰にでも理不尽を被る。
この物語は大きな戦争の終結して平和が訪れた世界、現実で似た状況だとすると第一次世界大戦後のヨーロッパだろうか、ヴァイオレットは物語全体を通して人生の最大の理不尽−死−と向き合う。
 
「兵器」として戦場を転々としてきた彼女は多くの敵兵を殺めてきた。言葉を持たなかったということは死の意味も知らなければ自分のしてきたことの意味も知らなかった。
軍で腫れ物のように扱われた少女をあてがわれたギルベルト少佐は初めて人らしい生活を、そして言葉を与えた。
言葉を覚えたばかりで自意識の覚束ない彼女は少佐と過ごしてやっと生きる意味を見出し始めたであろう。だが、戦争を終わりに導く作戦が終わろうとしているところ、ギルベルトは敵兵の凶弾に倒れ、直後の砲撃からヴァイオレットを庇い彼女の前から消えてしまった。「生きて、自由になりなさい。心から……愛している」という言葉を最後に与えて。
 
ヴァイオレットにとっての初めて向き合った死は少佐の死であった。何もかもを与えてくれた人の喪失は本当にどうしていいのかわからないものだろうし、僕も想像がつかない。ただ、少佐の最後の言葉を胸に、彼女は自動手記人形として依頼者の様々な想いを伝えることで生きる道を進んでいく。
 
言葉をそれなりに使っているものですら愛という言葉はよくわからない。けれどもヴァイオレット・エヴァーガーデンが知ろうとする姿を通して鑑賞者は理不尽の克服を、愛と言うものの意味を自らの中に紡いでいけることができるのではないだろうか。
 
自分なりに捉えるならば、愛とは誰もが生きることを肯定し慈しむ心だろうか。それを忘れないことで強く生きていけるのかもしれない。
 
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